変身

変身

変身


AmazonKindleで無料だったのでとりあえずダウンロードし、数日前にauのケータイがつながりにくくなったんで暇つぶしに読んだら予想以上に面白くてびっくりした。


主人公がある日目覚めたら虫になっていた、という出オチ作品。この導入部分だけ知ってる人は相当多いと思う。というか俺がそうだった。



個人的に予想していた展開が、そこから元の身体を取り戻すために悪戦苦闘する展開かと思ったら全然違って。ずっと家の中に引きこもっているだけだった。ずっと主人公視点で語られるので他の世界が全く見えないのだけれども、家族からは見放された感じで、しかもどんどん家庭の環境が悪化していく展開が読んでてぞわぞわした。



主人公の家庭環境は、年老いた両親二人と妹一人という状況で、主人公が一家の大黒柱みたいな状態。一応両親も働いているけれど、あまり収入が高くないので、家の収入の大部分は主人公の稼ぎで担われていた。妹はまだ高校生で、大学や専門学校に行くか、それとも就職するかって悩む時期。けれども一応持家なので、なんとか暮らすのに不自由はなかった状態。


そんな状況で主人公が虫になってしまう。


するとどうなるかというと、徐々に貯金は無くなり、家庭から高級なものが減っていく。主人公は何かを言おうとするものの、虫になってしまったので聞き取ってもらえない。家族はその絶望的な状況を受け入れられず、主人公に積極的に関わろうとしない。


そんな、家庭が崩壊するまでのジリ貧の状態を虫目線で見ていくのが斬新かつ面白かった。主人公が家庭から疎まれていく状況と、徐々に家庭が崩壊していくまでの流れが上手に織り交ぜられ、段落と句点が少ない文体だったのでとにかく勢いに乗って読まされてしまった。



主人公は元に戻れず家族から疎まれ、低収入でどんどん生活に困っていく一家。はたしてそのオチは如何に。



とワクワクしながら読んだけど、なんだこのオチは! どういうことだよ!!!



とはいえ、この話は全然進まないけれど虫目線で非常にねちっこく詳細に書かれた描写は読んでいて面白かった。出オチ作品とはいえ、有名な作品はやっぱり面白いわ。