ダークナイト・ライジング

ダークナイトのその後を描いた作品。ダークナイトからストーリーが繋がってるので、ダークナイトを見てないとストーリーがさっぱりわからないと思います。

ストーリーを軽く紹介。前作『ダークナイト』でジョーカーと戦う途中で地方検事のデントを殺した悪名をかぶったバットマンバットマンは悪人として人々の心に残るも、ゴッサムシティ自体は直後に成立したデント法のおかげで平和な都市になっていました。平和になったためバットマンは姿を消し、警察の仕事も減っています。そんな時、マスクをつけた凶悪犯であるベインが登場。主人公の経営する企業で密かに作っていた新エネルギーを核兵器に転用させ、策略により大量の警官を地下に生き埋めにしてしまいます。そして核兵器をちらつかせながらゴッサムシティを再び治安が悪い都市に戻してしまいました。そんな状況で一時期いなくなっていたバットマンが街を守るために再び登場する……。大まかなストーリーだけだと街がピンチになるのでバットマンが出てきた、程度で終わっちゃいますね。


観てる途中で気づいたんですけど、この映画ってめっちゃ長いです。165分って3時間近くあるじゃないですか。ベインがどんどん治安を悪化させながらバットマンが身体を鍛えてる間で『あとどれぐらいあるんだろう』って時間を見たら1時間半ぐらいあってびっくりしました。時間を知らずに見始めてたので、ここまで長いとは予想外。

また、個人的にはオチがイマイチでした。最後の喫茶店のシーンで執事が見たのは幻だったのか本物だったのか、というあたりが。それを除くとしても、自己犠牲でみんなハッピーエンドみたいな展開は「結局立ち直ったのって何だったの」みたいながっかり感がありました。『平和な街になりました。主人公も生きがいを見つけました』という展開になるかと思ってたんですけど。まぁ、バットマン以外みんな幸せというオチは前作『ダークナイト』も同様でしたが。


などと不満点はあったんですが、映画全体の流れとしては割と些末な部分。この映画のメインとしては『平和になったとき、ヒーローはどう思うか』『愛する人が居なくなった後に残された人はどうするか』あたりがメインでしょう。特に前者は、ヒーローが悪者を倒してめでたしめでたしで終わっちゃう映画が多い中で、「ではその後のヒーローは?」という回答を見せてくれたという点で非常に興味深かったです。

ダークナイト』でのバットマンは悪人を倒すための動機がたっぷりあったので特に問題なくバットマンが活躍できました。けれどもそれが終わった後は、街が平和になってしまったのでバットマンの出番がなくなってしまいます。バットマンとしての仕事もなくなり、プライベートも充実しない日々。気力が無くなってしまい、ある意味で投げやりになってしまった人間がどう生き残り、立ち直っていくか。いわゆる燃え尽き症候群になってしまった人の生き方とは。そういう状況で結果的に自分の心と向かい合って立ち直る(ついでに身体の不調も治ってしまうのですが)までの過程が非常に面白かったです。

また、今回の敵は前作の「なんでこんなことするのか分からない」タイプのジョーカーとは違い、純粋に治安を悪化させるのが目的の敵なので前作とは違った怖さがありました。核爆弾を見せつけるスタジアムのシーンと、それを原因として治安がどんどん悪化していくまでの流れはかなり怖い。その間にバットマンが前述の『自分の心と向かい合って立ち直る』までの過程を見せていくので、「おいおい早く出て来いよマジやべーって」って感じでハラハラさせられました。


ノーランによるバットマンシリーズ『バットマンビギンズ』『ダークナイト』から続く3部作の完結編としては素晴らしい出来でした。前作で色々あった部分をきっちりとまとめあげ、ちゃんと街を平和にしてめでたしめでたしという展開で、見終わった後に「いろいろあったけど(バットマン本人の心境はともかくとして)街が救われたのはよかったねー」という気持ちにしてくれたのは非常に良かったです。時間が長いのが難点ですが、ダークナイトを観た人はぜひ観たほうが良い作品ですね。