進撃の巨人(実写映画版)

前情報としては、荻上チキ氏のラジオに登場した監督の話を聞いたぐらい。その話を聞いて「怪獣映画として面白そう!」という期待を膨らませつつ劇場へ。

感想としては、怪獣パニック映画として見るならかなり面白い作品だと思います。

ストーリーはほぼ原作通り。三重の壁を作っていた国に突如100m超えの巨人が壁を破壊し、10m級の巨人が多数侵入。おかげで住民は1つ内側の壁(第2の壁)の中に移住することになったが、調査兵団たちは第1の壁の修復の為に再び壁の外へ向かう……という感じ。ある程度の設定変更はあったような気がしますが、原作を読んだのがずいぶん前なのでイマイチ覚えてないです。

ラジオで聞いた前知識として、10m級の巨人はCGではなく実際の人間を使っているというのがありまして。おかげでものすごいリアルな巨人なんですよね。『性器と乳首が無いだけで身体がデカい人間が無邪気に歩いて人を食う』ていう感じがとてもよく出ていました。無邪気だからこそ食われる人たちにとっては怖すぎるというか。

100m級の巨人が壁を破壊してから10m級の巨人が多数入ってきて、人々が逃げ惑うなか巨人たちが掴んでは食べ掴んでは食べを繰り返すシーンがパニック怪獣映画の本領発揮という感じで、「さすがだ! 俺はこういう怪獣映画が見たかったのだ!!」と思っちゃいました。そういえば怪獣って街を破壊するだけで人間を食べる怪獣は少ないよね。

中盤は調査兵団結成→第2の壁を抜けて第1の壁へ……という展開なので巨人はあまり出てこないんですが、終盤の立体軌動装置を使いつつ建物の上で逃げながら巨人と戦うシーンはやはり凄い。序盤の無邪気な雰囲気のままで「わー建物の上にエサがあるよー」みたいな雰囲気で楽しそうに人間を襲う姿が怖くてよかった。ただデカいだけでここまでの怖さになるとは。


と、特撮技術というか怪獣映画として褒めまくっちゃいましたけど。ストーリーは個人的にイマイチだったんですよね。

死んでたと思ってたけど演出は良かったと思いますが、中盤のイチャイチャリンゴとかレッツファックのシーンなんかは要らないと思っちゃいましたね。日常からの非日常という落差を演出するのであれば、普通にごはん食ってるだけでもいいじゃん。

サブキャラクターのほうが個性的すぎて、主人公3人のキャラクターがイマイチ見えにくかったのもなぁ。頻繁に喧嘩吹っ掛けてくる仲間のアイツなんかはそれまでの流れと終盤での戦闘での立ち回りなんか最高に輝いてたと思う(キャラが立つという意味で)んですが、ミカサなんかは「お前結局どうしたいんだよ!」みたいな感じがあったし、アルミンなんかは『割と序盤からいる人』程度にしか活躍してなかったし。

原作がまだ完結してないのと映画が2部作になってるせいもあるんですが、この映画単体だと完結してないんですよね。2部作だから第1の壁をふさぐあたりで終わりだとは思うんですけれども。原作通りに進めちゃってるからこそ、キャラの背景とか悩みとかを解決する前に「なんか巨人倒してとりあえずめでたしめでたし」みたいになっちゃってるのが消化不良感があって。

個人的には『全体のストーリーを解決する途中で各キャラクターの葛藤や悩みを解決』という展開がスカッとするんですよね。だからこの映画では、前述の喧嘩吹っ掛けてくる仲間のほうがその辺を解決できてたので主人公っぽいなぁと思ったり。主人公も見捨ててしまった仲間についての葛藤を解決できたものの新たな悩みを抱えてしまったので「そこで悩んじゃうならダメだろ!」みたいなガッカリ感がありました。


という感じでストーリー的にはイマイチだったんですけど。元々怪獣映画のつもりで見に行ったのでかなり満足できる作品でした。巨人が街を破壊しながら暴れるシーンは「これこれ! こういう怪獣映画が見たかったんだぜ! リアルすぎてこわーい! 素敵ー!!」と思いながら観てました。人間を食べるタイプのパニック怪獣映画が観たい人にオススメ。