UFO学園の秘密

さすがにまだDVD化されてないのでサウンドトラックでお茶を濁す幸福の科学によるアニメ映画シリーズ。自分が観たことあるのは仏陀再誕だけ。


全寮制の学校に通う主人公たち。文化祭で自由研究の発表をすることになったがテーマがなかなか決まらなかった。そんなとき身の回りで天才塾という怪しい塾が話題になっていて、UFOにさらわれたのではないかと主人公たちは考えた。そこで主人公たちはUFOについて調べ始めたのだが……というあたりが公式サイトに書かれてる段階の内容。


宇宙人ネタって80年代ごろからずっと続いてるけど、近代科学の発展(主に映像機器)によって「宇宙人はどこかにいるかもしれないけど、アダムスキー型UFOとかグレイはさすがに無いだろ」という感覚が一般に広がってるんじゃないかというのが個人的な考え。アダムスキー型UFOってのはスカートつきの背の低いドラム缶の下に半球が複数ついてるタイプの浮遊機械で、グレイってのは頭と目が極端に大きくて口が小さく胴体が頭部と比較すると華奢で小さいタイプの宇宙人のことです。

あまり鮮明でない写真が多かったり、そもそも写真機をみんなが持ち歩いてない時代だったら「もしかしたら」と思えるものの、近年では写真加工技術もだいぶ発展したうえにみんながスマホを筆頭としたカメラを持ち歩く時代になってから全然宇宙人の話が出なくなってしまったあたり「やっぱり嘘だったんじゃないの」と興味をなくしてしまったんじゃないかなぁと思ってます。


という近年の宇宙人事情について真正面から立ち向かったのがこの映画。宇宙人による侵略が人知れず広がっているとか、夜の森に行くと宇宙人に誘拐されるとか、そういった王道シチュエーションを踏襲していったのは見事すぎる。高校生たちが揃って「まさか、アブダクションされちゃったの!?」って言う映画が2015年に登場するとは。

もっとも、個人的にはそこまで宇宙人に思い入れが無いので「いまどきこんな展開かよ」と声を殺しながら笑って観てましたけれども。(周りが真面目に見てる人たちばかりだったので声が出せなかった)


さて、幸福の科学が作った映画なので宗教的な要素はどこに含まれるかというと、『宇宙人との対抗策』というのが個人的に興味深かった。なぜ宇宙人と交信できる人とできない人がいるのか、なぜ宇宙人が攻めてくるか、そしてそれから守られているのかといった解決策が宗教的な意味合いで提示されているのは非常に面白かった。理に適っている話だったので「この設定はアリだな!」と。

また、それに対しての人間側からの解決策の提示が説教要素少な目だったのも個人的には評価したい部分です。というのも、仏陀再誕では(観たのがだいぶ前なので食い違いがあるかもしれませんが)偉い人が説教して主人公たち全員感動という説教くさい展開だったのが気に入らなかったんですよね。それに対して本作では設定の開示に対して「僕らはこうしたい。こう生きたい」と前向きかつ地に足の着いた結論に結び付いたのが非常に良かったです。主人公5人のうち2人はちょっとフワフワした結論でしたが。


その反面、終盤の展開が唐突かつ急ぎ過ぎなのはイマイチでした。B級アニメとして観るならともかく。終盤のアクション展開なんか5人全員に見せ場を作ってやれよとか思っちゃったし、悪の宇宙人だからといってマッドマックスみたいなUFOはさすがにナシだろとか、中盤から終盤まで「みんなの意志で世界をいい方向に発展させていこう」みたいな展開だったのにオチは他力本願かよ、みたいな。

個人的にはベガから帰ってきたあたりで終わらせれば(途中までの悪人による悪行が解決されてないとはいえ)割とスッキリした終わり方だったろうにと思うんですが。「せっかくだからいろんな要素を混ぜ込んじゃおう」と全部終盤に入れてきたんで結果的にバランスが悪い映画になっちゃったのが残念です。あと何回か映画を作ったらもうちょっとこなれてくるのかな。


終盤の展開はともかくとして、全体的には宇宙人と宗教の設定を強引ながらもまとめたことは素晴らしいと思いますし、そもそも2015年にUFO映画が新作として登場したこと自体が貴重ですし。観ておいてよかったなーと思いました。なかなか人に薦めづらいですが。